• Yoko Yoshimoto

「土壌の基礎」

最終更新: 4月17日



・土とは何か?腐植とは何か?コンポストとは何か?それらすべてを、うまく利用するには?以下は、土壌哲学者であり、農業経営者でもある、マーティン・フォン・マッケンゼン氏の講話からの抜粋です。

・土。土壌の基礎。その基礎が充分であること。マーティン・フォン・マッケンゼン氏は、土壌を熟知し、それを、伝授する。ヴィオディナミ農法を教える農業学校の校長。ザルツブルグで行われた今回の講演会に、ヴィオディナミ農法を実践する醸造家たち(以下、ヴィンツァーと表記)、23人が参加した。

マッケンゼン氏は、’80年代前半に、ヨーゼフ・ボイス氏の下で芸術を学び、その後、ボイス氏の影響から農業の道へと進んだ。無論、始まりは、彼の子供の頃の夏の農業体験の程度のものからであった。彼は、「頭が柔らかければ、考えの方向性は変えられる」と、ボイス氏の言葉を引用する。そして、こう付け加えた。やがて多くの人は考えるだろう、「私たちは、自然との付き合い方を変えなければならない」と。彼は、特にヴィンツァーに向かって、強く鼓舞した。

「ヴィンツァーは、ヴィオディナミ農法への取り組みに、特別な立場にある。」と、マッケンゼン氏は言う。「あなた方は、そのパイオニアとして、実践しなければいけない。セイヨウイラクサの調剤の製法や、ホルンミスト(雌牛の角に牛糞を詰め、1年間、畑の土の中で熟成させたもの)、その他の可能なコンポスト調剤を使うことによって。とりわけヴィンツァーは、ヴィオディナミ農法を使うにふさわしい立場にある。なぜなら、あなた方は、その他の農業分野の人々と違って、政府の補助金(農薬や化学肥料を購入するための)をもらっていないから。しかも、あなた方の場合、調剤を作ることだけでなく、それにより、ブドウの収穫量とワインの品質のバランスの効果を、見極めることが出来るのだから。」

特権と義務

マッケンゼン氏は、ヴィンツァーたちに、ワイン業界と固有のブドウ栽培文化の範囲を超えた、広い視野を要求する。「君たちは、うまくいっている。」それは、今日この会場に来ている、尊敬すべきヴィンツァーたちのことを指している。「しかし、ヴィオディナミ農法を実践する、ブドウ農家以外の農民たちは、なかなか大変な思いをしている。」一方、畜産農家は、コンポストのための家畜の糞を、提供してくれていない。ヴィンツァーたちは大抵、他の農家からそれを手に入れているのが現状だ。尊敬すべき皆さんは、数十年の、もしくは、数百年の伝統と、平均して数十haの畑を守っている。2018年に、あなた方23人の組合員は、10周年を迎えた。その農法は、ルドルフ・シュタイナー氏の教えに従っている。無論、実践していることは、純粋に農業に関することだけ。シュタイナー氏の提唱する人智学や、社会政策的な見解には立ち入っていない。

このザルツブルグでの集会では、とりわけ、土と植物の処置のための、ヴィオディナミ農法の調剤の経験の意見交換に時間が割かれた。その調剤とは、ホルンミストとホルンキーゼル(雌牛の角に珪石の粉末を詰めて、夏場に土に埋めて作られる)、それと、その他のコンポスト調剤。その他のコンポスト調剤とは、セイヨウノコギリソウ、カミツレ、イラクサ、オーク樹皮、タンポポ、カノコソウで作られる。全ては、不変のルールに則って乾燥させて、牛の腸や、雄牛の頭蓋骨、そして、雌牛の角に詰められ、ワイン畑に埋められる。「このようなお話は、ここで公聴されている皆様のスーツ姿とは、似合わないかもしれない。このヴィオディナミの調剤の話は、ワインメッセが開かれるごとに広められ、その晩のイベントとして、星付きレストランで、あなた方のワインを紹介している」。調剤は、自分で作らずとも買う事もできる。しかし、それはどちらでも良い。大切なことは、実際の土に、回帰する事。「つまり、肝要なのは、土。すべてが土から始まっている。」

「土とは一体何か?どの基準がそこに必要なのか?」と、マッケンゼン氏は、皆に問う。そして、「私たちは、いかに生き生きとした土を、創造することができるか?」

引き抜いてしまえば、草の成長は遅くなる

「はっきりとしている!ヴィンツァーの答えは。一掴みの土の中には、魅惑的な多様性がある。土は、生命。微生物、てんとう虫、ミミズが、土なのだ」。マッケンゼン氏は、更にその原理へと踏み込んでいく。彼は振り返って、こう質問した。「どのように土は、生じるのか?」その答え;土は、過去の生命から生じる。ブドウ樹は、土に影響を与える。土が、ワインに影響を与えるのと全く同じように。

「確かに、化学農法は、土に目覚しい効果を与える。しかし、その過程は、そこで起こるすべてを表しているわけではない。」土を造る要因として、例えば、降雨量や、石灰土壌かどうかなどの条件を、彼は重要視していない。そして、彼は外見の基準、つまり経済主義から生じる事象から切り離す。何が残るのか?マッケンゼン氏は問う。「それは、植物。植物のみ。」と、彼は言う。「植物は、過去の生命の貯蔵庫だ。博物館や、アートギャラリー、アーカイブ、一冊の分厚い本のように、そこにどのような生命が活動してきたかを教えてくれる。ヴィンツァーは、その課題を受け取めて、改善し、更に先へ伝えなければならない。」

自然は、死を創造する、より多くの命を得るために

「自然は、死を創造する、より多くの命を得るために。」マッケンゼン氏のそのような哲学的な言葉で、会場全体がそのムードに包み込まれる。「あなた方、ヴィンツァーは、生命の誕生を見るという、御加護を受ける」と。1年に数回、彼は学生たちと、山登りに出かける。そこで、漂礫(氷河によって運ばれてきた礫)が多く見られる場所に行き、剥き出しなった岩塊の表面に、最初の植物が生え始めているところを見る。その根の周りに、少しの土が引っかかっている。つまり、土が後から付着する。やがて、多くの土が付いてくる。植物が、土を作るのだ(枯れた植物が土になる)。

掘り起こさずに、朽ちさせる

植物は、持続的な創造者です。土と太陽の間に、物質を創る。そこから、私たちは命をもらう。もし、ヴィンツァーが、ブドウ畑で、すべてを急いで掘り起こしてしまえば、葉っぱはすぐに落ちてしまう。葉っぱが自然に役割を終え、地面に落ち、朽ちる前に。「動物は、相互関係を創り出す」と、マッケンゼン氏は言う。例えば、ミミズは、コンポスト作りの名人。生物の活動と根の成長によって、土の中に通路が作られる。それは全て、微生物の活動によって造られたものだ。

「共に栄える土と植物の多様性」のシュタイナーの説明は、ちょっと理解し難い。マッケンゼン氏は、「多様性なる自然」を、自然固有の経過だと説明する。それを私たちが、編成していく。「私たちが、出来ることだけ、手伝えることだけをする。もし、引き抜いてしまえば、草の成長は遅くなる。私たちは、植物に肥料を与えるのではなく、土だけに肥料を施すことが出来る。」

あなたの土を知りなさい

ビオの土は、自然のコンポストのみで作られる。牛や羊や馬の糞を利用した堆肥は、土の生命活動を促す。元来、土は、活動のプロセスを、最初から最後まで、自分で行うものだ。ミミズや、微生物、バクテリアは、堆肥なしで、完全な腐植の条件を造ることが出来る。「もし、4月の終わりか、5月の始めに、土の上に寝転がってみるといい。その活動の音を聞くことが出来る。」と、マッケンゼン氏は、熱く語る。「そこでは、信じられない成長が起こっている。1日に3cmも成長する時がある」。

どのように人は、土を耕すべきか?「出来るだけ少なく、出来るだけ平らに、しかし、必要であるべきことは多く。」と、マッケンゼン氏は言う。土をスコップで掘り起こし、そして、考えてみる。それは、どんな土なのか?もろくて、隙間があるのか、それとも、粘りこく密になっているのか?「人は耕すことで、土の中に、常に空気と光を供給する。しかし、果たしてそれを、土が必要としているのかを、考えなければならない。土が必要としないものは、その作業は、非生産的なものになる。」

マッケンゼン氏は、再び視点を過去に向ける。「常に忘れされている、私たちが、耕作を始めた起源を。」と、彼は切り出した。「穀物は、人によって変えられてきた土を必要とした。そして、畑の耕作が始まった。人は土を掘り起こして、平らにした。しかし、そうすることで、すでにそこに住んでいた土の生物も追い出された。」

「私たちは、残忍な罪を犯している!」

人間による作業は、土を激しく変える。「バイオガスを作るためのトウモロコシの栽培の現場では、腐植土が過激に使い古されている」と、マッケンゼン氏は、会場の尊敬すべきヴィンツァーに語る。「その後、その畑では、水耕栽培と、無機質堆肥でしか、栽培できなくなる。私たちは、残忍な罪を犯している。と言うのも、手の平2枚分の幅の腐植土層を再生させるには、最長200年は掛かるからだ。」

「腐植」とは一体何か?

「腐植は、物質ではなく、一つのシステムである」と、マッケンゼン氏は言う。「腐植を見た者はいない。しかし、私たちは、その成果を知る。そして、それが、土の色を黒くすることを知る。」例えば、ロシアの粘り気のある黒土は、50%以上をはるかに超える腐植成分を持つ。良い腐植土が出来るには、寒い冬と、暑く乾いた夏が必要である。中央ヨーロッパのヴィンツァーはいいが、南の産地のヴィンツァーは、不利である。

コンポストとは何か?

マッケンゼン氏は、答える。「コンポストとは、さもなければ、捨てられていた有機性のゴミや枯れ草などを集めたもの。」まず一度、コンポストの塊は、発酵により熱を出し、それにより、ガス交換が起こり、水が排出される。その後、土状になったものが残り、それを使用する。アドバイス;完成したコンポストに、土を混ぜ合わせることにより、酸素が入り、微生物が窒息せずに済む。常にコンポストの中に酸素があって、湿った塊がないことが大切。

良いコンポストとは?

「土の匂いは、いつも『自然の精神』について説明している」と、マッケンゼン氏は、少し、突飛な表現をした。「まさしく土の様な匂いがするのか、あるいは、ムッとした強烈な匂いがするのか?」論理的に、良いコンポストは、土の匂いがしなければならない。「大切なことは、泥の層を作らないこと。そして、植物の茎や葉、ブドウの搾りかすを混ぜ込むこと。」と、彼は言う。時に、ブドウの枝を混ぜたりする。それらが、ゆっくりと朽ちてきて、コンポストが構築される。

各々の農家は、自分の持つ畑のことをよく考えること。条件や関連性、その因果関係が何かを。自分の畑の持つ、重要な個性とは何か?土壌、下草、立地、手入れをする時期など。「ヴィオディナミ農法とは、『抑えようのない自然の拡散』である。それと人は、関わり合わなければならない」と、マッケンゼン氏は、そう付け加えた。

「野菜栽培農家と牧畜農家らは、あなた方の経験を必要とする時が来るだろう。そうなれば、彼らはあなた方に、進んで良い家畜の糞を与えてくれるだろう。」と、彼は言った。「もし、私たちが、私たちの土の品質を保たなければ、私たちは、地下水と多様なる植物界と動物界を守ることが出来ない。」と、マッケンゼン氏は、最後に締めくくった。


報告;Juliane Fischer  訳;Yoko Yoshimoto  協力;Werner Zitzl

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