• Yoko Yoshimoto

「インタビュー;クニプサー醸造所(ファルツ地域)」

最終更新: 4月17日



・今回は、ファルツ地域のクニプサー醸造所のお話です。後半に行くに従って、ドイツワインの真髄へと入り込みます。

Q:ファルツ地域に居を構えるクニプサー醸造所は、伝統的な個人経営の醸造所。白ワインだけでなく、赤ワインのアイテムも豊富に品揃えしています。赤ワインファンにとっては、とても興味を引くもの。なぜなら、ドイツには良い赤ワインがない、あるいは、ドイツは赤ワインの生産が苦手であると、多くの人が思い込んでいるからです。クニプサー醸造所の赤ワインを試した者は、私が思うに、きっとこの蔵に注目するでしょう。では、クニプサーさん、あなたの蔵について、色々とお聞かせてください。

A:私たちの蔵は、家族経営で、私が三代目です。私の父は、第二次大戦後より、瓶詰ワインの生産を始めました。最初のボトリングは、1940年代です。1970〜80年代に、私の兄と私が、後を継ぎました。私たちは現在、60ha弱のブドウ畑を持ち、そのおよそ半分が、赤ワイン用のブドウを栽培しています。主要ブドウ品種は、シュペートブルグンダーで、その次に多いのが、リースリングです。要するに、赤ワインと白ワインとを同等に、力を注ぐことがモットーということでしょうか。力強さとエレガントさを兼ね備えたワイン造りを目指しています。

Q:でも、ファルツ地域の伝統的なブドウ品種である、シュペートブルグンダーとリースリングの他にも、あなたは、カベルネソービニヨンやグラウブルグンダー造っています。白ブドウによるキュベワインである、シャルドネ&ヴァイスブルグンダーと、もう1つ、ゲヴュルトラミナー&リースリングというワインも、アイテムにありますね。

A:はい、比較的、多彩にブドウ品種を栽培しています。1970年代のファルツ地域のワインは、他の農家からブドウを買い取ってワインを作る、品質よりも量を重視した、「桶売り」が当たり前でした。しかし、私たちは、その時代より、そのイメージから逸脱した独自路線を歩んできました。私たちは、「桶売り」などに興味がなかったので、醸造所元詰のワイン生産をしてきています。この素晴らしいファルツ地域の気候の下、品質面で良いものが出来るという考えは、既に父の代からありました。ワインには多くの要素があります。ドイツワインと言えば、まずはフルーティー。しかし、私たちは、そこに労力を費やすことはしませんでした。1980年代に、カベルネソービニヨンを植えました。その次に、シュペートブルグンダー。まずはこの地で、うまく熟すかどうか確かめたのです。結果は、とても期待の持てるものでした。そして、’90年代始めには、カベルネフラン、メルロー、シラー、ソービニヨンブランを植えました。ちょうどその頃は、フランス品種がオープンに手に入れることが出来るようになった時期でした。それ以前は、他国から苗を持ってくることは、とても難しかったのです。しかも、ファルツ地域では、いや、ドイツ全土でも、フランス品種を植えることは、公には禁止されていました。その当時は、まだ試植、申請が必要でした。それに、1971年のワイン法改正の際に、リストアップされた推奨ブドウ品種は、一体誰がそれらのブドウ品種に興味を持つの?という内容でした。やがて、フランスのブドウ品種も認められるようになってきましたが、植える際に、まだ許可が必要でした。

Q:このモダンと言うか、いかしたと言うか、例えば、ソービニヨンブラン、カベルネソービニヨン、シラー、メルロー等のブドウ品種を、あなたは、早期に植えています。それは、あなたにとっては、当然であったのですね。

A:はい。以上のブドウ品種すべてを収穫出来たのは、確か1996年だったと思います。そして、‘90年代始めに、「キュベX」と言う赤ワイン(カベルネソービニヨン&カベルネフラン&メルロー)が、完成しました。ドイツの赤ワインと言えば、シュペートブルグンダーというイメージの、真反対のことをしたのです。

Q:こうして、価格リストを見ていると、興味深いことに気がつきますね。VDP会員でありながら、クラシカルな畑名を名乗った従来の表記のワインもあります。もちろん、VDP規格のランク分け、グーツヴァイン、オルツヴァイン、グローセゲヴェックセもあり、多種多岐にわたります。なぜ、あなたは、クラシカルな畑名のワインも残しているのでしょうか?

A:私たちは、伝統的なドイツのワイン法という概念を持っていますし、それは、どこかに染み付いています。そこに、新たなVDPの等級(フランスワインにあるような畑の格付けの概念)も加わりました。一番上から、グローセゲヴェックセ、エルステラーゲ、オルツヴァイン、グーツヴァインと、ピラミッドの形に図案化されています。しかし、私たちは、その新しいランク分けにすべてを収められないと考えました。私たちのワイン畑には、それぞれ特別な構成があるからです。VDPのランク分けにうまくあてはめらませんし、私たちが好むランク分けではありませんでした。テーマは、区画(畑)が決まらなければ、良いワインが出来ないということです。私たちは、本当に素晴らしい良い区画を持ち、そこに植えられているブドウにも、正しい見解を持っています。それらは、フランスから持ってきた品種です。そして、それは試植から始まったということです。話を整理しますと、1つに、私たちの植えているフランス品種は、VDPのランク付けの規定品種に入っていなかったこと。2つめに、例えば、私たちは、ソービニヨンブランを3つの区画に植えています。1つの区画に1,000本、また1つの区画に1,000本、そして、もう1つの区画に1,000本が植わっています。それで始めて、しっかりとした量のワインが造れるのです。つまり、区画なくして、ワインは生産できないということです。私たちの高級赤ワイン「キュベX」の場合、それらに使われている3つのブドウ品種(カベルネソービニヨン、カベルネフラン、メルロー)は、確かに、ファルツ地域で栽培許可がおりているブドウです。しかし、現在それらは、必ずしもVDPの等級にあてはめなければならないブドウ品種ではありません。それよりもまず、それらのブドウ品種は、細かな畑の区画に分散して植えられています。要するに、私たちは、それらをVDPの区画のパターンの中にあてはめることができないのです。同じ、グーツヴァインでも、価格8ユーロのリースリング・カビネットから、40〜45ユーロする赤ワインまで存在するのは、そんな理由からです。

Q:あなたのワインの文体論とでも言いましょうか、それは白ワインから聞いた方が良いでしょうか。自然発酵、培養酵母による発酵、赤ワインでは、開放タンク発酵などがありますね。それらをどのように使い分けているのでしょうか?

A:そうですね、分けるとすれば、白ワインと赤ワインですかね。これは全くはっきりと分けています。白ワインの場合、さまざまな視点から見ることが出来ます。例えば、早く売りたいワイン、具体的には、それほど高いアルコールを出さないワイン、11〜12,5度くらい。つまり、フレッシュで、フルーティーで、ライトで、でも、薄いという意味でない、ちゃんとした、表現力のあるワイン。例えば、友と飲んでいて、もう一本開けたくなったとする。それをすべて飲み終えても、翌朝、残らない。そんなニュアンスのワインです。

Q:ブドウ品種で言えば、ジルバーナですね。あなたのリストには、ジルバーナ・トロッケン、そして、リースリング・カッペレンベルクという畑名入りのカビネットがありますね?

A:それは、古典的なカビネットです。これは、私たちが大切にしているカテゴリーです。カビネットは、アルコールが低めのワイン。残念ながら、近年あまり見かけなくなりました。アウスレーゼクラスのブドウを、発酵を進ませて、13,5〜14%のアルコールを出し、それをカビネットに格下げして出すという蔵が増えました。しかし、それは私たちの本望ではありません。当蔵では、決してあり得ない。それは、カビネットと言うランクの信頼です。本来のカビネットというものは、アルコール度が11,5度、時には、11度、あるいは、年によって12度に仕上がる時もある、その様な範囲のワインです。カビネットは、軽くてフレッシュ、食事向けのワイン。季節で言えば、夏のワインです。これが、古典的なカビネットであり、かつては、よく飲まれていましたし、造られてもいました、これこそ、私たちの大切にしているものです。

Q:では、次の質問にいきましょう。ゲヴュルツトラミナー&リースリングのキュベワイン、そして、シャルドネ&ヴァイスブルグンダーのキュベワイン、後者は、アルコール度が高めのワインだったかと思います。

A:その通りです。ブルグンダー品種のワインは、ボディーが命。より高い完熟度を目指し、ボリュームがあって、濃さを実感できる必要があります。まさしく、シャルドネ&ヴァイスブルグンダーのキュベがそれです。それは、1995年から続く当蔵のヒット商品。この2つのブドウの相性は、とても良い。シャルドネは、酸と骨格、フルーティーを演出します。ヴァイスブルグンダーは、それに滑らかさを加えます。それは、現代人の嗜好でもあります。どんな料理とも合いますし、もちろん料理がなくても、とても多くのシチュエーションで使えます。このワインは、私たちにとって、とても注力しているワイン。私たちの育てるヴァイスブルグンダーとシャルドネは、このワインのためにあると言っていいでしょう。

Q:そして、もう一つのカテゴリー、高い熟度のブドウを使って、それを辛口に仕立て、樽熟成させたワイン。

A:これは、正直言って、趣味のワインです。でも、もしかしたら、重要な位置を占めるワインかもしれません。単純なものでなく、やさしくなく、単なる生産品としてではなく、、、。何と言いましょうか、、、ワインは、畑で造られます。高い品質であればあるほど、または、高い品質を目指せば目指すほど、畑が重要になってきます。それが、自然発酵か、あるいは、培養酵母による発酵かの問いになります。軽くてフレッシュなワイン、それらは大抵、培養酵母による発酵で造られます。なぜなら、飲み口の綺麗な辛口ワインを重要視するからです。これは私たちにとって重要なポイントです。そして、もし、繊細さを求めるならば、私は、ゆっくりと時間を掛けた発酵をとるでしょう。発酵に長い時間を掛けること、それは、酵母を苦しめることです。例えば、発酵温度を下げ続ける。それは、つまり自然発酵の様に、温度が上がってこない。すると酵母が、まだ糖をアルコールに転換できるのにも関わらず、生活をしにくくなって、活動を停止してしまう。つまり、培養酵母による発酵は、ワインを辛口に持っていくには、安全な方法と言えます。

Q:逆に、自然発酵の場合、明らかに短時間に発酵を終えるということですよね。ある意味、簡単に発酵が終わることが有り得ると、、、。

その確率は高いと言えるでしょう。樽熟成の場合、私たちは、自然発酵をとります。それは、多少、冒険でもあります。樽発酵の場合、ワインが酸化します。ボディーが出ます。しかし、フルーティーさという点では、マイナスです。ライトなワインに仕上げたい場合、やはり、フルーティーさを出したいのです。今、ここで、その中間に位置する、複合的なテーマに入ります。この点も、私たちが、大事にしている点ですが、高度に完熟したブドウで醸した、しかも、木樽で発酵させたグローセ・ゲヴェックスの場合です。このワインは、発酵後も、さらに数年、瓶内で熟成をさせます。なぜなら、我々ドイツのヴィンツァー達は、南の産地よりも、冷涼な気候の下でワイン造りを行っています。それは、私たちだからこそ出来る条件です。つまり、より長い期間、ブドウが幹に付いている、それは、ブドウが、より長い間、土と繋がっているということ、つまり、それは、植物の代謝過程が南の産地と異なるということです。例えば、光合成=太陽光による糖の生成。また別の過程から生成される、タンニン酸やアロマ、その他、数千にも及ぶ同化作用の違いです。そこが、冷涼地域であれば、その過程は、ゆっくりと行われます。その曲線は、温暖地域よりも緩やかです。要は、我々ドイツのワインは、ミネラルが豊富なワインを造ることが出来るということです。それは、さまざまな味の構成を持ち、長期熟成が出来るというポテンシャルがあります。それは私たちに、待つ楽しみを与えてくれます。若くして飲むワインには、それが出来ません。だから、私たちは、2つを分けるのです。若くして楽しむワインは、フレッシュで、ライトであるべきです。味の複雑さを求める場合は、樽の中で、あるいは、瓶の中で熟成させ、いくらか時間を費やします。

Q:なるほど。ちょっとここで整理したいのですが、「熟成を待たなければいけない、重めのワイン」と「フルーティーなワイン」とは、どんな時に飲めば良いのでしょう。

A:私は、いつもこう説明します。もし、多くの友達を呼んで、パーティーをしてワイワイやりたいのならば、フレッシュで、若く、ライトなワインを開けます。そんな時に、重い赤ワインを開けてはいけません。パーティーの邪魔をしてしまいます。もし、自分と向き合いたい時、そのワインと向き合いたい時には、重い赤ワインがふさわしい。逆に若いワインでは、静かに飲みたい時、その時間を楽しみたい時には、ちょっと落ち着かない。つまり、さまざまな要素によって、ワインを選択するのです。

Q:分かりました。次に、白ワインのグローセゲヴェックセについて質問します。「マンデルプファド」と言う畑と、「シュタインブッケル」と言う畑の、リースリングのグローセゲヴェックセがありますね。それらは、同じVDPの最高ランクの辛口ワインのランクです。簡単でいいのですが、その2つのワインの違いを説明して頂けますか?

A:ポイントは、畑の違いです。一般的に、ワインの特徴の違いは、畑の違いです。まず、「マンデルプファド」と「シュタインブッケル」の土台は、黄土です。それは、間氷期に度々起こった砂嵐によって運ばれ、吹き溜まりとなって、広範囲に堆積してできた地層です。その上に、大きく分けて2つの土質が、私たちの畑に重なっています。砂と小石の多い、「カッペレンベルク」の畑と、北部の石灰岩層です。グローセゲヴェックセは、すべて、この石灰岩層です。石灰成分が、ワインの味に複雑さと、長い余韻を与えます。

次に、先に挙げた2つの畑、「マンデルプファド」と「シュタインブッケル」の気候の違いを説明します。「マンデルプファド」の畑は、盆地状になっています。そして、「シュタインブッケル」は、その反対で、小さな丘になっています。丘にある場合、夜間の風で、日中に畑に停滞した暖気が、急速に冷やされます。一方、盆地になっている「マンデルプファド」は、昼間に溜まった暖気が、夜になっても停滞します。その場合、植物の代謝が夜になっても、ゆっくりですが行われます。主に、酸がより速く分解されます。そのような理由で、2つの畑のワインは、味にも違いが現れてきます。「マンデルプファド」は、ふくよかで、酸が穏やか、黄色い果実のニュアンスがあります。「シュタインブッケル」は、よりミネラルが豊富で、生き生きとした酸を感じます。

作;DerWeinmaklker (2013,5,25) 訳;Yoko Yoshimoto 協力;Werner Zitzl


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