• Yoko Yoshimoto

「2018年の収穫日記〜前編」

最終更新: 4月17日



・以下の文章は、ファルツ地域にある蔵元の、2018年の秋に書かれた、実際の収穫日記からの抜粋。この中には、毎年の収穫時期における、予測不能な自然と向き合う蔵元の考え、迷いなどが、はっきりと読み取ることが出来る。

2018年のブドウの成長期

2月と3月の気温が、前年より低く、ブドウの発芽は、ごく普通に4月半ばに迎えた。1月に降った雨によって、土は多くの水を蓄えていたのと、その後に始まる、例年にない気温の上昇により、私たちが今まで体験したことのない速度のブドウの成長が始まった。通常では、発芽から、ブドウの収穫まで、5ケ月半掛かるのに対し、2018年は、4ケ月と、1ヶ月半速く進んだ。よって、余分な害虫対策や施肥をしなくて済んだ。けれども、すべての手作業が、素早く、短期間に行われなければならなかった。それにしても、この地中海の様な気温は、なんだ!

2018年は、ブドウの水分供給が決定的な要素だった。6月半ばより、雨が極端に少なくなった。7月半ばからは、若いブドウ樹は、乾燥と夏の高温に、侵される。若いブドウ樹は、まだ根が深く広く伸びていないからだ。間違った土の管理や剪枝は、ブドウ樹の乾燥のストレスを高めてしまう。私たちの持つ若いブドウ樹の畑は、点滴灌漑によって害を免れた。また、長く実施しているヴィオディミ農法も、それに報いている。

収穫開始

本格的なブドウの摘み取りの開始の前に、すでに昨年の様に、少しのジャガイモ収穫が行われた。収穫日は8月27日、晴天の日だった。乾燥した気候のため、収穫量は多くはないが、大きくて出来がよい。その多くは、来週から始まる、収穫作業の労働者たちの胃袋に収まるだろう。

2018年の収穫

8月に収穫が始まることは、今までの私の記憶にない。1940年代後半にこのような暑い年があったと聞いている。が、それは記録だけのものでしかない。

8月28日 収穫初日

少人数の摘み取り作業員(計12人のポーランド人。もう25年以上、私たちの蔵に働きに来ている)と、いつもの私たちの地元のチームと、研修生らが、最初のワイン畑へと向かう。そして、今年はもう1人、オーストラリアの大きな醸造所から、私たちのチームに加わった。彼は、私たちのこの小さな醸造所で、伝統的なヨーロッパのワイン醸造を学びに来た。今日は、ゼクトのための、シャルドネとシュペートブルグンダーの収穫をする。生育は良好で、特に、酸の質が良い。

私たちのゼクト用のブドウは、茎を含めてブドウ丸ごとを、プレス機にかける。そうすることによって、ワインにわずかなタンニンが含まれる。そのためには、摘み取りの際に、ブドウの粒が潰れることのないように、畑から、プレス機まで運ぶことが肝要になってくる。今回、私たちは、収穫したブドウを入れるための小さな箱を350個、購入した。その箱には、側面と底に、スリット状の穴が開いており、それで、ブドウの温度が上がるのを防いでくれる。収穫とは、このように、繊細な心遣いが必要となる。それが、結果となって現れる。

初めて、新しい籠式(垂直式)圧搾機を使う!長年使っている空気圧式圧搾機と並んで、今後は、この新しい籠式圧搾機も働くことになる。特に、赤ワイン、高品質の白ワイン、並びに、ゼクトのベースワインを造る時に使う。それらの圧搾機は、1,200lまでのブドウ(モロミ)しか搾れない。ゼクト用ワインのプレス工程に、私たちは、4時間掛ける。ゼクト用ワインに関しては、このように繊細な作業をする。しかし、その時間は、本場のシャンパンのベースワインを造る時よりも短い。その理由は、私たちは、「ブラン・ド・ノアール」を造る際の、シュペートブルグンダーの皮の赤色を、ワインに出したくないからである。

8月29日 収穫2日目

今日も、ゼクト用のシュペートブルグンダーの収穫を続ける。ブドウの品質と、完熟度、そして、酸の要素は、パーフェクト!

とても暑い。この夏の天候に、私たちは憂慮したが、風が強く吹いたことと、夜間に降った少しの雨が、気温を下げてくれた。

悪天候は、常に、私たちにつきまとう。だから、今年の品質と収穫量に関する予想はまだ、今の時点では早すぎる!強い雨と雹がもし降れば、ちょっとの間で、私たちの期待を打ち砕く。

私たちのファルツ地域のブドウ農民にとって、ちょっとした悩みの解消に役立つことが、少し前にあった。それは、”ハーゲルフリーガー“と呼ばれる飛行機。深刻な雹の被害が予想される時、カールスルーエの気象観測員たちが、2機の小さな飛行機を、雷雲の中を飛ぶ。その中で、ヨウ化銀を散布することにより、雹になる前に、小さな氷晶を作るという訳だ。その勇敢なパイロットたちは、ファルツ地域の農業の被害を防いてくれるだけでなく、屋根や車、太陽光発電板などの損害を防いでくれる。

8月30日 収穫3日目

今日もまた続けて、シュペートブルグンダーの収穫。でも今日は、赤ワイン用。これまでの私たちの世話によって、収穫に至る完璧な品質に達した。それは、ドイツの古いシュペートブルグンダーのクローン“アルプスト”で、実が小さく、コンパクトで、多産でなく、早い収穫、そして、高い品質をもたらしてくれる。フランスのクローン“777“と特徴がよく似ていて、私たちの畑でもよく育つ。今年一番の、GG(最高ランクの辛口ワイン)のためのシュペートブルグンダーが収穫できることに、私たちはほっとしている。

午後は、再び、ゼクト用のシュペートブルグンダーの収穫を進めた。ここでまた、収穫用の小さな箱が役立っている。

8月31日(金) 収穫4日目

私たちの蔵元開放の日が、間近に迫っている。収穫と並行して、訪れるゲストのために、その準備をしなくてはならない。外回りだけでなく、ワイン貯蔵庫も、きれいに整える。新しく瓶詰めした2017年産のGGを搬入し、当日、試飲と販売が、スムーズに出来るようにしておかなくてはならない。

早朝に、私たちの畑の敷地で育つ、りんごの圧搾と瓶詰めをした。りんご担当チームがよく働いてくれた。新しいりんごジュースの味は格別で、嬉しい。

今日、ブドウ収穫チームを増員した。それを、2つに分ける。ブドウ樹の列の多い1箇所の畑に1チームと、その他の細かな畑に1チームを配置する。そのチーム分けには、意味がある。列の多い畑の場合、畑の中央の列にブドウが運ばれてくるため、同時に仕事を進める場合、中央付近の人員が一番忙しい。そこに人の層を厚くするという訳だ。

蔵元開放の前に、ゼクト用のシュペートブルグンダーと、ランク上の赤ワインの仕事をまとめておく。

9月1日 蔵元開放

たとえ、今日と明日が蔵元開放であっても、ケラー内の発酵作業チームの仕事は続く。今日は、モストの澱引きを行う。つまり、残った果肉などの小さな沈殿物は、フィルターにかけれらて、澄んだモストになる。昨日までの収穫されたブドウは、マイシェの状態になっているので、今日は、静置だけを行う。私たちの伝統的なやり方で、破砕除梗されたマイシェは、大切なアロマとミネラル分をブドウの皮から抽出するために、次の日までタンクに寝かされる。このように、私たちの仕事は、1日ごとのサイクルで行われる。

1日目は、ブドウの摘み取り、破砕除梗をしてマイシェにする。2日目は、圧搾(マイシェがモストになる)。3日目は、澱引きと、言ったように。

私たちの蔵元開放の初日は、すべてが順調に、理想的な天候に恵まれて進んだ。ゲストと従業員らは、気分良く過ごせた。

9月2日(日) 蔵元開放2日目

蔵元開放の2日目は、期待はずれの曇り空であった。前日はまだ、夏の恰好で過ごせた、しかし、今日は、久しぶりに少し羽織が必要となった。

夏は、果たして、過ぎてしまったのだろうか?

室内の“ワイン畑巡り”とも言える、私たちの最高ランクの辛口ワイン“GG”の垂直試飲は、とても期待の持てるものとなった。過去20年間、これほどの高いモストの値を示したことはない。あの例外的に暑かった2003年ですら、この数値は出なかった。しかも、もっと良いことは、2003年と比べて、酸の値がすこぶる良いことだ!今後が楽しみ!

9月3日 収穫5日目

蔵元開放が終わり、収穫作業にすべてを専念できる。今日は、ソービニヨンブランと、グラウブルグンダーの収穫に入る。まず、理想的に熟した、最も古いブドウ樹の区画から収穫した。一部のグラウブルグンダーの収穫は、もう少し待つことにした。

この日は、昨日の様な、灰色の雲に覆われた天候から始まった。午後も遅くなって、やっと晴れ間がのぞいた。

9月4日 収穫6日目

今日、シュペートブルグンダーの収穫の日課を立てる。しかし、どの畑が、完熟しているかを見極めるのは困難である。ほぼどこの畑も、理想的な段階に少しだけ達していない。しかし、日当たりの良い特級畑GGは、ほぼ理想に近い熟度を満たしていることに違いない。

ブドウの実りの段階の違いは、土壌の性質と、ブドウ樹の樹齢に関係する。今日はまず、明日からの仕事に向けての見通しを立てたい。そのために、明日収穫予定のすべての畑のブドウのサンプル検査をする必要がある。それぞれの畑で、およそ100粒のブドウを集める。それを潰して計測し、モスト量と酸の数値を予想する。その数値は、明日からの仕事の確かな基準となる。

夏の気候が戻ってきた。

9月5日 収穫7日目

夏のような日差しの下、再び喜びが湧いてきた。ブドウのサンプル検査の結果、2018年の品質は、とてつもなく良いことが分かった。ブドウの糖分が上昇し続けているだけでなく、より大切な酸の数値も安定している。温暖な年の典型的な水準を保っている。また、一つ確実に推測できることは、2003年のヴィンテージの様な酸の欠乏は、おそらくないということである。ブラボー!

専用の箱を使って、今朝、最初のリースリングの畑で、ゼクト用のブドウを摘み取る。その後に、最も古い木樽で発酵し、2023年からリースリングゼクトとして発売される。ここでは、リースリングの圧搾の適正を調べるために、再び籠式圧搾機を使う。その結果は、納得できるものだった、この手間のかかる作業が、特に、時間を掛けることが大切。

小さな区域のリースリングの摘み取りは、急いで行われた。よって、午前中のうちに、残りのグラウブルグンダーの摘み取りを始めることができた。素晴らしく熟している。ワインになった時の色が興味深い。理想的な成長条件を満たした、青銅色の皮を持つグラウブルグンダーは、ワインに色がつく。色素が付くのは、赤ワイン用ブドウだけではないのだ。よって、今年のグラウブルグンダーの、24時間後のマイシェの色合いは、とても赤い色をしていた。発酵と熟成の後には、いつもの経験から、薄い玉ねぎの皮の色(茶色がかったピンク色)のワインになるであろう。

9月6日 収穫8日目

シュペートブルグンダー!濃い紫色に色づく!グラウブルグンダーの収穫の後には、コンパクトな粒が特徴の、シュペートブルグンダーが熟れてくる。早速、一級畑の収穫に取り掛かる。

その後、もう1つのシュペートブルグンダーの畑に出向く。この畑には、私たちが1964年に植えた最も古い、シュペートブルグンダーが実をつけている。私の父と、祖父から続く畑の1つである。その古木のブドウは、未だもって、ますます健康で、ますます優れた、繊細な味のブドウを付ける。もし、私たちとお客様が期待するようなワインの品質を、この畑が保持するならば、将来、この古い畑に、祖父の名前を付けてもいいと考えている。

今日も昨日と同じく既に、夏の気温となった。午後遅くに、雷雨の予報。まるで、仕事の終わりの時間に合わせるかのような雷雨、ちょうどいい!まとまった雨は、気温を下げてくれる。今の所、この時期によくある雹はない。真夜中にも、強い雨が降る。それは、ブドウにどう影響するか?粒が落ちてしまうか、それとも、カビが発生するのか?こうした雨によって、その年の収穫の良し悪しが決まることがよくある。吉と出るか、凶と出るか?

9月7日(金) 収穫9日目

真夜中に降った、激しい雷雨。過去にもあった、すべての状況を変える悪天候のことが、頭をよぎった。夜間に、上空が雨雲に覆われると、一晩中気温が下がらず、まるで南国の様に湿度が上がる。しかし、雨が予想より早く止んだ。良かった!

しかし、早朝の湿度が、とても高かった。いつもの8時半の収穫は、少し待った方が良い。ブドウ樹には、雨の雫がたくさん付いていた。収穫は、12時からと決めた。

その決定は、正しかった。ブドウは、全く乾いていた。いずれにしても、乾き続けていた畑にとって、今回の降雨量は、全く問題ない。畑に残ったいくつかの水溜まりがもしなければ、昨夜の雨は、まるで無かったかのようだ。

私たちは、シュペートブルグンダーの収穫を続けた。実のコンパクトなブドウは、完璧に熟している。GGになるワインに、とてもふさわしい。

9月8日 収穫10日目

天候は安定している。午後には、26度以上を記録した。降り注ぐ光が、私たちの収穫班を、少し日焼けさせた。

今日もまた、ブルグンダー品種の収穫。午前中、シュペートブルグンダーを、日の光が降り注ぐ中、蔵へと運んだ。午後も、二班に分かれて、それぞれ別なクローンのシュペートブルグンダーを収穫。その後、ロゼワイン用のシュペートブルグンダーを収穫。最後には、二班が合流して、ヴァイスブルグンダーの収穫へ。ヴァイスブルグンダーも、ここ数日に、高い糖の数値を記録した。豊作である。

9月9日 休息日

休息日と言っても、収穫作業だけのこと。ケラー内は、仕事で溢れている。開放タンクの中のマイシェのブドウは、お互い重なって、ひしめきあっている様に見える。それらは、ポンピングされ、フィルターを通して、再びマイシェの上に注がれる。マイシェがまだ発酵してない間は、皮や種、茎を、下から攪拌する必要はない。3日目に収穫したシュペートブルグンダーも、まだこの段階だ。他のタンクのマイシェも、発酵の前に、まだいくらか静置しておく。その後、低温マセラシオンをする予定。いずれにしても、今年の様な高い気温だと、マイシェを冷やすことは困難である、なぜなら、果皮と果肉がよく分離したマイシェは、冷やすのに時間が掛かるからだ。果汁のポンピングは、この場合、有効である。

昨日、収穫したヴァイスブルグンダーもまた、今日のうちに圧搾する。収穫作業が日曜日でも、ケラー要員の日曜日は、忙しく過ぎるのである。

9月10日 収穫11日目

休み後の収穫班の、新しい週が始まった。私たちは、いつも7時半に、仕事の準備を開始する。連結荷台を繋げたトラクターにエンジンをかけ、ブッテン(背負子)、収穫バケツ、手洗い用の水、飲用の水を積む。その後、収穫要員が畑に到着するのは、定刻通りの8時半。昼食は、畑の脇で食べる。毎日、30人分を用意する。いつもの秋の涼しい気温ならば、スープや煮物、そして、おやつには、温かいコーヒーや、焼きたてのケーキを出すところ。今年のような暑い年は、皆、冷たいものを欲しがる。

気候条件は、毎日良い。確かに午後の気温は、28度以上と暑い、しかし、夜になると冷え込み、早朝には10度以下となる。ワインの酸の数値もしっかりとある!

今日は、2種類のブドウ品種の摘み取りに掛かる。ソービニヨンブランとヴァイスブルグンダー。摘み取っている間に、ソービニヨンブランの糖の値が、期待した高さを示した。これを、先に摘み取ったソービニヨンブランに加えることで、品質が上がる。バリック熟成のワインにすることも可能かも。

同じことが、黄土とロームの混在土壌で育つヴァイスブルグンダーにも当てはまる。それらのブドウは、「レス・レーム(黄土とローム)」とラベルに表記され、グーツヴァインか、テラーヴァインに仕上がるだろう。

9月11日 収穫12日目

雲ひとつない快晴の、文句無しの夏の気候、気温は、28度。先週の強い雨の時、もしかしたら、品質に悪影響が出るのではないかと、少し思った。しかし、この雨は、畑に足りない水を供給しただけでなく、さらにブドウを完熟させる効果があった。2018年のヴィンテージにとって、水分は、品質の決定的な要素となる、もしくは、要素となった!水分の供給の仕方と、その畑の保水能力が、重要になってくる。簡単に言えば、土のへの働きかけ、つまり、土を覆う植物への気づかいと、収穫の気づかいのこと。2018年のように、暖かい、乾いた年には、古木のブドウ樹の役割も大きい!樹齢が古ければ古いほど、根の張り方は、広く深い。古木の水分と、栄養の供給は、実に安定している。若い樹は、根の張り方や、別れ方が狭く、土中に深く伸びていない。その点、私たちのブドウ樹の平均樹齢は、22年。この乾燥を懸念すべき、若いブドウ樹の畑は、そう多くない。

いずれにしても、黄土とロームの混在土壌に、奥深く根ざしたブドウ樹は、今年の乾燥した気候条件の元では、うまく対応している。このミネラルを多く含む、痩せた畑では、どこも順調に、ブドウが熟している。畑によっては、完熟している。

私達は本日で、ヴァイスブルグンダーの収穫を完了した。ジルバーナと、シャルドネも、順調に熟しており、収穫が始められそうだ。

熟し方の状態を、総合的に判断をするために、再び、すべての畑のブドウのサンプル検査を行う。この作業には、正しいサンプル収集方法と、検査のための丁寧な圧搾、そして、評価が大切となる。そして、すべての畑から、およそ400のサンプルが集められた。1つの検査ごとに、少なくとも10分は掛かる。

夕方に、結果が出された。すべてのブルグンダー品種が、理想的な熟成段階に入っていることと判断された。次に、明日、どの畑の列を摘み取るべきかを決める。モストの値は、高すぎないほうが良い。例えば、モスト値が100エクスレ、もしくは、それ以上あれば、結果的に、アルコールが15度に達してしまい、私達の理想とするワインではなくなるから。

9月12日 収穫13日目

夏の気温は続く。今日も雲ひとつない、日差し輝く青い空。気温は、30度以上に昇った!私たちは、盛夏の暑さの中、収穫を行った。

再び、シュペートブルグンダー!高温、乾燥、それに伴う、過熟によって、粒が縮み始めることを、避けたい。さもないと、マーマレード様の香りの赤ワインが出来てしまうから。私たちは、ワインに構成と深みを与えるべく、クリアーで、クールな、赤いフルーツのアロマと、良く熟したタンニンが欲しい。合わせて、偉大なる長熟のポテンシャルを持ち合わせる、赤ワインを目指している。

夕方には、すべてのシュペートブルグンダーの収穫が終え、私たちの蔵のタンクも、ちょうど許容量に達した。収穫量の減った、ここ2年のヴィンテージを思うと、とても嬉しい。それだけ今年は、ブドウの質は最高だし、素晴らしい赤ワインが期待される。シュペートブルグンダーGGにとって、理想的な状態。また、ポータワインタイプの赤ワインにも、シュペートブルグンダーを回せそう。

9月13日 収穫14日目

天気は曇り。昨日の30度から、今夜は、少しは気温が下がるだろう。また、予報によれば、今夜は、風と雨。しかし、今年は、今まであまり予報が当たらない。6ヶ月続いた夏の気温から、今日は、通常の秋の気温の20度に。タンスから長袖長ズボンを出してくる。今まで、こんな長い夏はなかった!しかし、この長い夏は、未だに終わる気配がない!

今日は、リースリングの摘み取りをしたい。リースリングにとって、今日の気温20度は、適切でないことはない。およそ80エクスレ。それは、ゼクト用のワインには、ふさわしい数値。酸も、まだしっかりと残っている。ここでも、一部は、籠式プレス機を使用。いずれにしても、リースリングの場合、粒の中の果肉の割合が多いので、ピノ系品種よりも、大変で手間がかかる。大部分は、シャンパーニュ地方と同様に、ブドウ丸ごとを搾る。また、ここでは、最後の方の果汁は、よけられる。それは、苦味成分が多く、酸も3〜4g/lと少ないからである。ピノゼクトと同様に、リースリングも、すべて古い小さな木樽で発酵させる。

午後に、まだ残っている貝殻石灰岩土壌のヴァイスブルグンダーの収穫をする。また、1つの収穫班は、すべて白のブルグンダー品種から造られるゲミシュター・サッツ(混植混醸)のワインの収穫をする。ブドウ品種は、シャルドネ、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、そして、オクセロワ。皆同じレベルに完熟した、多くの構成要素を兼ね備えた、素晴らしいハーモニーのワインが出来る。

9月14日 収穫15日目

昨日の収穫の後に、本当にわずかな雨が降った。夜にも、ポツポツと降ったが、朝には、全くその名残は見られなかった。今日も、変わりやすい涼しい気候。しかし、週末には、夏が再び、戻ってくるらしい。

朝早くからに、ヴァイスブルグンダーGGのための収穫をした。私達は、2班に分けて、別のGGの畑の摘み取りをした。

本当に、収穫時期を待った甲斐があった。完全に、健康で、完璧に完熟したヴァイスブルグンダーは、2種類のGGにとって、理想的な基盤と言える。それは、小惑星への、完璧で精密な着陸と似ている。

ケラーには、すでに、シャルドネと、ソービニヨンブラ用のバリック樽が用意されている。新しいファルツ産のバリックと、フランス産のバリックは、あらかじめ、中をお湯で洗わなければならない。当蔵のバリックワインは、赤白とも、3分の2は新樽で、3分の1は中古樽で、熟成させる。

9月15日 収穫16日目

予報通りに、素晴らしい天気に。気温は、再び20度以上に上昇。

ムスカテラーとゲヴュルツトラミナーが、完熟の領域に達した。今日は、「アロマ・デー」と呼ぼう。今日も、グループの2つに分ける。収穫して良い畑の中でも、細かな部分が存在するからだ。しかも、それらのブドウ品種のすべては収穫しない。私たちが、辛口ワインにすると予測した部分だけを、まず収穫する。残りの実は、まだいくらか先まで付けておく。

この畑でも、私たちは、豊作に喜んだ。2年ぶりの豊作の体験。昨年は、2つのブドウ品種共に、霜で大損害を受けた。自然は、先に起きた出来事を、調節しようとするものだと思う。だから、多くの花をつけ、果物や野菜が採れる「豊作」を、2年の不作の年の後に、くれたのだと思う。自然は、そのサイクルの中で、生き残る術を学んできた。

9月16日 日曜日 休養日

日差し輝く晴れの日は、朝から、多くの人々をワイン畑へと導く。20年来、9月の第3日曜日は、ワインフェストの日。この日は、のんびりとした、ワイン畑へのウォーキングと、美食のパーティー。しかし、昨今の気候変動が、このワインフェストに、多くの問題をもたらした。第1回目のフェストの際には、ワインの摘み取りの開始時期は、ほぼ10月に入ってからだった。それが、年を追うごとに、それが段々と前倒しになり、やがて、ワインの摘み取りの真最中に行われるようになってしまった。天気が良いと、他の蔵のフェストの客を合わせて、数千人がやって来る。20年前は、まだ良かった。しかし今は、ついでにやれるという仕事ではなくなった。私たちは1日の間に、屋外での試飲の準備、机、長椅子、グラス、冷やしたワインの運搬、テントの組み立て等、すべての支度をしなくてはならない。長い経験で、慣れていることとはいえ、このフェストには、多くの仕事、徒労、そして、気遣いが要る、しかもそれが、大切なワインの摘み取りの時期の真只中であるとうことだ。今年のように、天気がとても良くて、多くの来客が、楽しむ姿を見れば、それはやり甲斐があろう。しかし、過去3年間は、それが、私たちに取り、徒労に終わった。

しかし、収穫班を働かせる訳にはいかない。フェストの設営と、給仕、そして、夕方の解体の仕事は、地元の別のチームを組織した。外が暗くなった午後8時には、すべて片付けることができた。

ケラーの中では、もちろん多くの仕事があった。昨日摘み取られたブドウの一部の圧搾と、ろ過、そして、モストの静置。ケラーの灯りは、夜中までついていた。

(後編に続く)


作;Hansjörg Rebholz (2018) 訳;Yoko Yoshimoto

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