• Yoko Yoshimoto

「ヴィンツァーの言葉」

最終更新: 4月17日



ラインガウ地域にある女流醸造家、テレーザ・ブロイヤー氏が、ZDFのドキュメンタリー番組で紹介された。以下は、その要約。「 」内は、テレーザの言葉。

ライン河沿いにあるワイン産地、リューデスハイム村。今、まさしく収穫の秋。この季節は、ヴィンツァー達の、今年一年の大仕事となる。この蔵の女当主、テレーザ・ブロイヤー氏は、ブドウの収穫のために、数十人の外国人労働者たちを統率する。

「私の蔵は、ほぼポーランドから、季節労働者を雇います。そして、彼らと仕事を共にします。中には、正規雇用者として一年中、私たちと働く者もいます。ワインの摘み取りのために、彼らは、家族、近所の人、友達を連れてきます。」

ブドウ収穫の労働者たちは、役所に登録を終えるとすぐに、ブドウの摘み取りの仕事に取り掛かる。彼らは、数台の車に分乗し、畑へと向かう。今日の作業場所は、標高220mに位置する「ベルク・ローゼンエック」という名の畑。リースリングが育つ一級畑だ。テレーザは、英語で、ポーランド人のリーダーに仕事を説明する。それを、リーダーが、ポーランド語に訳して、仲間に伝える。この畑は、急斜面ゆえに、機械での収穫は行えない。すべて、手摘みで行われる。それにより、最高のブドウだけを、ワインに使うことができる。

「我々の畑の半分、およそ17haは、急斜面です。そこでの収穫は、手摘みでしか方法がありません。だから、私たちは、一つのチームを作ります。とても仕事がハードゆえに、一丸となるチームが必要なのです。」

およそ30人の収穫要員が、仕事に取り掛かる。機敏で、徹底した同じ行動が、良い成果を生む。

「カビの生えていない、虫に食われていない、小粒で、パーフェクトなブドウだけを求めます。だから、摘み取りの際には、ブドウをじっくり観察し、良いものだけを選り分けます。」

決して、楽な仕事ではない。しかし、テレーザ自身も、ポーランド人と共に畑に出る。

「よく、観光の若い御嬢さんたちが、畑に入って、はしゃぐのを聞きます。『まぁ、リースリングよ、私、このワインが大好き』って。しかし、私は、良いワインを造ることで、頭が一杯。いつ収穫をするか、このブドウから、どんな味のワインにしていくか。それを、自らの手でしていく。だって、最終的に、私の名前が、ワインのラベルに載るのだから。」

傾斜角60度の斜面での仕事は、とても大変な仕事である。知らない者にとり、それは、全く未知の体験である。

「あるポーランド人の女性労働者は、昨年まで、斜面の緩やかな、ファルツ地方で働いていました。ところが、ここはこの様な急斜面です。彼女は最初の二日間働いて、言いましいた。『くるぶしが、どうかなりそう!ずっと、こんな体勢で、踏ん張っていないといけないなんて!ここの仕事は、全く違う!』って。」

畑に霧が立ち込めてきた。ここ数日の湿度の高さは、ブドウにはよくない。ブドウが実るほど、皮が薄くなる。そこで、高い湿度が来ると、皮が破けやすくなる。すると、そこからカビてしまう。ポーランド人たちは、機敏な仕事を要求される。

観光客らが、ライン河の風景を楽しむ傍ら、ブドウ農家たちは、神経をブドウに集中させる。霧が晴れてきた。良い兆候だ。好天は、ブドウにとって本望だから。

「このケースを一杯にすると、15kgのブドウが入ります。もし、妥協して1週間、摘み取りを早めて、完熟していないブドウを搾ったならば、10%ほど搾れる果汁が減ります。理想的な時期にブドウを摘みとれば、すべて無駄にせずに果汁を得ることができます。それが大切です。ブドウ1kgで、1本弱の量のワインができる計算になります。」

これまで、1,200kgのブドウを収穫できた。そこから、およそ800lのワインができる。しかし、収穫量と給料とは関係はない。すべての従業員に、同額の給料が支払われる。時給にして、8,60ユーロ。

「摘み取った量に応じて、給料が変わる訳ではありません。また、速く摘みとると、時給が上がる訳でもありません。箱の中のブドウの状態が、私の要望に合っているかどうかが大事です。私がブドウを見て、良いかどうか、つまり、製造者としての責任です。」

「私は、小学校1年生の時から、学校が休みの時に、ブドウの収穫を手伝っていました。2004年に、父が他界し、急遽私が、この蔵の当主となりました。それは、予期しない出来事でした。卒業論文も、途中で中断して、醸造家としての道に入りました。全くゼロからのスタートです。知識も経験もありません。それから、現在14回目の秋を迎えています。私の従業員たちと共に、醸造者としての責任を全うしてきました。」

ワイン畑沿いを流れるライン河は、ワインの品質に重要な役割を担う。

「ライン河の影響は多大なものです。ライン河は、我々にとっても、環境にとっても、重要な役割を担っています。ライン河がなければ、絶対にワイン生産業は、成り立ちません。ライン河を利用した船での物流のおかげで、ラインガウ地域のワインは、他の地域よりも早い時期から、世界に知られるようになりました。」

急斜面での労働は、体力を消耗させる。朝から働いて5時間が経って、楽しい昼食の時間が来た。

「さぁ、準備ができたよ!ところで、ソーセージのことをポーランド語でなんて言うの?“パルフカ”って言うの?」

「ワイン畑の脇で、皆で一緒に、昼食をとることが、私たちの伝統です。私たちの仕事はハードです。皆の体調を見ることが大切です。午後から、もう半日仕事が続くのですから。」

リューデスハイム村での、リースリングの収穫の毎日。当主のテーレザ・ブロイアー氏は、ケラーにも足を運ぶ。ケラーには、3,500kgのブドウが搾られ、ジュースにされ、2,600lのモストが出来た。ケラーマイスターのマルクス・ルンデーン氏と共に、タンクから、モストを抜き取り、味を見る。

「(モストの味を見て)ライト、けれど、凝縮している。しっかりとした、味の構成を持っている。フールーティーで、良い酸がある。」

醸造のプロたちは、満足気。ブドウが搾られるとすぐに、ジュースはタンクの中へと運ばれる。ここで、ワインへと発酵が進む。

「今、発酵して8日目のワインをグラスに取って、テイスティングをしています。当然、まだ発酵途中です。でも既に、美味しいワインになる素質が伺えます。」

管から発せられる、ボコボコと言う発酵音が、一定のリズムでケラーの中に響く。

「モストが、ワインへと発酵していきます。それは、まさしく、糖からアルコールへの転換です。酵母が、アルコールを造り、同時に、二酸化炭素を出します。その二酸化炭素が、音を奏でるのです。」

テレーザが、再び地上のワイン畑へと足を運ぶ。リースリングは、パーフェクト。けど、シュペートブルグンダーが、今ひとつ熟していない様子。彼女は、ポーランド人のリーダーと相談する。

「目で見ただけで、40%かな、いや、50%以上のブドウが地面に落ちている。それらを、私たちは、見過ごすしかない。落ちたブドウは、すべて使えない。ショウジョウバエの被害も広がっている。ちょっと前なら、被害はなかった。でも、その時は、ブドウが熟していなかった。私たちは、ある一定のレベルまで、完熟を待たなければならなかった。でも、その前に、ハエが繁殖してしまった。全く、大損害だ。」

終了時間が来るまで、ポーランド人たちは、収穫作業に励む。

「まだ明日も、急斜面の仕事が続くよ。なぜなら、ブドウがまだ十分に実っていないから。もう4日、晴れの日が必要。では、今日の仕事はおしまい。また明日。」

ライン河沿いの急斜面での仕事が終わる。ライン河は、ただ単に、ドイツで一番長い河と言われるだけではない。ある人にとっては、観光明媚な地であり、また、ある人にとっては、必要な生活の糧である。ライン河の流れには、深い意味がある。

作;ZDF reportage (2018) 訳;Yoko Yoshimoto 協力;Werner Zitzl

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