• Yoko Yoshimoto

「地球温暖化とドイツのワイン産地」

最終更新: 4月17日



・ユリウス・キューン研究所に勤める、ブドウの品種改良の専門家、ラインハルト・テプファー教授が、将来のドイツワインをテーマに、昨今の温暖化について答えた。

Q;ドイツでは、数十世紀に渡ってワインが造られ、とりわけ、伝統的なブドウ品種「リースリング」が、全世界で販売されています。しかし、今、若い醸造家たちは、新しいブドウ品種に興味を示しています。今、有望視されている新ブドウ品種はありますか?

A;「カラルディス・ブラン」という、白ブドウ品種です。このブドウは、さまざまな害虫や病気に耐性を持ち、そして、晩熟型です。つまり、今後の気候温暖化に対応出来るブドウ品種と言えます。

Q;気候温暖化とは、つまり平均気温の上昇と、集中豪雨が増えること。そのことは、ドイツのワイン生産にとって、どのような影響を及ぼしますか?

A;およそ3週間、ブドウが早く完熟します。以前は、10月に入ってやっと、ブドウの収穫が始まりました。しかし今は、温暖化の影響で、9月にはもう、ほとんどのブドウ品種の収穫が始められています。それは、異常と言えます。

Q;早い摘み取りは、ワインにとってどんな影響を及ぼしますか?

A;早熟は、ブドウの酸が減って、そして、糖が過剰になります。つまり、アルコール度が高く、酸の不足したワインになります。それは、白ワインにとっては、マイナス要因です。白ワインにとって、酸は重要な要素です。

Q;それにより、醸造家たちは、どのような選択を取るのでしょうか?

A;醸造家たちは、今後十数年の変わりゆく気候条件に備えていかなくてはなりません。具体的には、ブドウ品種の選択です。北国ドイツで、南ヨーロッパのブドウ品種を植える蔵も出始めました。もしくは、将来の環境に適合する改良品種の選択です。ドイツでは、既に多くの改良品種が準備されており、その分野は、他国よりも進んでいます。

Q;では、ドイツの伝統品種であるリースリングは、将来の気候に合わないということですか?

A;いいえ、伝統品種は、今後も大切な立場にあります。それらを保持するために、既存の特級畑だけでなく、いくらか気候の冷涼な地域に耕作面積を増やす考えもあります。

Q;伝統的なブドウ品種を生かす、今後の対策はありますか?

A;我々、品種改良を専門にしている研究チームは、突然変異のブドウ品種に注目しています。既存のブドウで顕著な例としては、「シュペートブルグンダー」の突然変異種である、「フリューブルグンダー」というブドウがあります。「フリューブルグンダー」は、「シュペートブルグンダー」よりも、数週間ほど早く完熟するブドウ品種です。もし、他の伝統的ブドウ品種で、そのような突然変異種の関係が見つかれば、気候変動の適応に応用できます。

Q;実際に、新品種の改良は、どのように行われているのでしょうか?

A;私たちは、まず父型、母型の遺伝子選択を研究します。そこから、特別優れた特徴を持っている遺伝子を見つけて、それを自然交配させます。秋を待って、その種を採取します。それらは、出来るだけ、害虫と病気に耐性があって、しかも、ワインの質も優れたものでなくてはなりません。

Q;どのような観点で、改良を進めていくのでしょう?

A;私たちは、そのブドウの持つプロフィールを作っていきます。例えば、そのブドウのモスト量(収量)は、どれくらいかなど。中でも、熟す時期は大切です。その他、果実の主要成分である糖と酸を調べます。

Q;ワインの味は、重要ではないのですか?

A;プロフィール作成の段階では、あまり重要ではありません。味を見るのは、そのブドウがワインになった後です。つまり、発酵の後、それと瓶詰めした後に、研究班は、醸造家を交えて、味についての考察をします。

Q;市場で成功を納めた改良品種は何ですか?

A;「レゲント」と言う赤ワイン用ブドウです。改良品種の中では、最大の栽培面積を持ちます。この品種は、地中海地域で育つブドウの風味を持ちます。つまり、スパイシーで、力強い。とりわけ、温暖な気候条件の下、その品種はうまく育ちます。「レゲント」は、害虫や病気に耐性を持ち、改良ブドウ品種としての条件を満たしています。栽培面積は、伝統的ブドウ品種である、トロリンガーやシュヴァルツリースリングとほぼ同じで、ドイツ全体の2%程です。

Q;気候温暖化によって、ドイツのブドウ栽培地域は変わるのでしょうか?

A;現在のブドウ栽培地域は、そのまま残るでしょう。仮に、他の場所に拡張するにしても、ごく限られた範囲になるでしょう。ドイツとEUのワイン法の制限があるからです。

Q;ブドウ栽培地域には、ワイン生産以外でも、重要な観光要素がありますよね?

A;その通りです。もし仮に、モーゼルのブドウ栽培地域の役割が、気候温暖化によって全く変貌してしまうのなら、大変な事となるでしょう。醸造家、観光業者、レストラン関係等、その地域の産業に携わる人々の多くが、収入源を失います。例えば、アール地域では、都市近郊の保養地としての役割を担っています。つまり、私たちは、ブドウの研究を通して、栽培地域の保存のための役割も担っているのです。

Q;温暖化によって、ドイツに代わる栽培地域が生まれる可能性は?

A;それはありえないでしょう。理論的には、スウェーデンのゴットランドでも、ブドウの栽培は可能です。でも、現実的でありません。むしろ、ドイツ国内に、発展の余地はあります。新しい土地に適合した、新しい品種が揃えば、それは可能です。もしかしたら、リースリングの栽培地に、優れた赤ワイン用ブドウ品種が育つかもしれません。


作;Reinhard Töpfer(2017,11) 訳;Yoko Yoshimoto


週6日営業 水曜定休

【配達時間】12:00〜15:45

【開店時間】16:00〜19:30

お問い合わせ ☎︎  053-461-2895 

​                〒430-0856  静岡県浜松市中区中島2-4-1 (有)平野酒店
           浜松ドイツワイン文化協会事務局