- Yoko Yoshimoto
『ラズベリー・ドリーム』
最終更新: 2020年11月19日
ある結婚式場で出たコース料理のこと。終わりのデザートにムースが出てきた。そこに乗っかっていたのは、ラズベリー。和名は、ヨーロッパキイチゴ。ドイツでは、ヒンベーレという名で、初夏の青空市場などで、新鮮なものが簡単に手に入る。そのラズベリーやスタッヘルベーレ(セイヨウスグリ)など、ベリー系果実は、ワインの味を表現する言葉によく出てくる。
ラズベリーは、赤い色をした、なんとも可愛らしい酸っぱみのある木の実。今回のデザートの甘さを引き締めた。その時、私はすぐに、あるワインを思い出した。ジークリスト家のドルンフェルダー2015年産だ。あえて、2015年産と記したのは、2014年産には、その酸味があまり見られないからだ。このワインが到着したばかりの頃、私はこの酸味が気になっていた。日本人は、とかくワインの酸味にクレームをつけるものだ。なぜ、2015年は、そんなに酸を感じるのだろうと、蔵元に質問しても、その酸に触れる答えはなかった。だが、その理由が、このムースに乗っかっていたラズベリーを食べて分かった。つまり、この酸味は、ヨーロッパ人にとっては、馴染みのある酸なのである。
私は、「ラズベリー」と聞くと、レベッカの「ラズベリー・ドリーム」という曲を思い出す。1980年代後半に活躍したバンドのヒット曲。女性ヴォーカルのロックグループの先駆けとも言えるだろう。思春期の女の子が、親に内緒で着飾って、夜の街に飛び出すという内容。ちょっと不良っぽく、ちょっとセクシーっぽく見られたいという、背伸びをした女の子の気持ちを描いている。そんな10代の少女の気持ちを、見た目も酸みも可愛らしい、けれども、ツンとした酸っぱ味のある、ラズベリーに例える感性は素晴らしいと思う。


ヴィンテージ 2015
品種 ドルンフェルダー
アルコール 12,5%
酸 5,9g/l
残糖 0,1g/l
飲用温度 12-15℃
価格 時 価
5年経過にもかかわらず、色鮮やか
で、香り立つ。フルーティーで、ク
リスピー。石(ミネラル)とハーブ
とラズベリーのニュアンス。食の進
むワイン。
作;Yoko Yoshimoto