• Yoko Yoshimoto

「ペーター・ヤコブ ・キューン」



・ペーター・ヤコブ ・キューンは、例外的な蔵元であると、大抵の人は言う。そして、同時に、グラスの中でそれを感じる。彼のリースリングの味わいは、実際に違う。


・ペーター・ヤコブ と、アンゲラ・キューン夫妻は、喜ばなかった。1990年に著名なワイン評論家が、このラインガウ地域のキューン夫妻のリースリングを、高く評価したのにも関わらず。


自分たちのワインを、その夫妻は、気に入らなかった。


「専門家の評価は、私たちと関係のないこと」と、アンゲラ・キューン夫人は素っ気ない。「その夏、私たちは、健康で、特別に美味しいブドウを実らせることに集中した。それでも、私たちのワインの味と、他の蔵のワインの味と、見分けがつかなかった。」


キューン夫妻は、根本的に変えたかった。まず、ヴィオディミ農法に転換した。夫のヤコブは、木樽を購入し、ブドウを茎と一緒に発酵させた。そして、そのワインを3年間、アンフォラ(粘土の素焼きの甕)で熟成させた。それと、800リッター入る釜で、乾燥させたスギナを煎じ、ブドウ樹に吹き掛けた。


更に、ホルンキーゼルも、夫妻は投入した。珪石の粉末を雌牛の角に入れて作るコンポストの調合剤で、それを雨水に溶いて攪拌し、ブドウの葉に噴霧する。ブドウ樹の新陳代謝を促すという。


全ての目的は、ワインの生産量を徐々に減らし、自然に任せること。


その方法を使うと、ワイン自らが整い、安定してくる。キューン夫妻は、ケラーの中でも、化学的な物質を、極力遠ざける。数年前から、蔵はヴィオ認証を受けている。


蔵の方針の転換と、それに伴う蔵の評価は、夫妻らに確信を与えた。ワインガイド「ゴー・ミヨ誌」で、2015年の「今年の醸造家」に選ばれた。


「私たちは、太古の思考で、ワインを造りたい」と、キューン氏。彼は、11代目として、妻と共に蔵を継いだ。「メーカーは、いつも介入してきた。この調合剤を使えば、もっと簡単だって。私たちヴィンツァーは、耳を澄まして聞く。彼らは、次から次へと、商品を薦めてくる。やがて、それは、私たちのワイン造りへの意欲を挫かせる。そして、私たちのブドウの意欲も挫かせた。ワイン造りが、自然との調和から、全くかけ離れてしまったのだ。」


ブドウの意欲を挫かせる?この言葉にピンと来ない人は、以下を読む必要はない。


メーカーの発言に、キューン氏は、理解できないどころか、拒絶反応を示す。しかし、私にとっては、とても興味深い。蔵元は、メーカーに言われて、あれこれ考える。そして、ブドウには、化学薬品を撒かないが、実は、ケラーの中では使用している。そういう人ほど、自然なワインについて、あれこれ語る(この意見に反論のある方は、知的なメッセージを私に送って下さい)。


私は、キューンのリースリング「珪岩(Quarzi)」と、名付けられたワインを、早速開けて飲んでみた。全ての懐疑家に対し、反証するために。


このワインに使用されたブドウは、ドースベルク(Doosberg)畑のもの。この畑は、南西向きの丘の頂上にある。よって、常に風通しが良い。そのことは、特に収穫期の秋に有利である。ブドウが健全に完熟し、カビの病気にかからないからだ。


土質は、粘土と、粒の荒い珪岩が混じり合った層。それは、ワインに、力強さと複雑味を、同時に与える。


グラスの中の、滴を見れば、既に分かる。キラキラと輝く、健全なレモンの色。


傑出した幾層にも重なる複雑な香り。まずは、複数の果実が香る。熟したパイナップルと黄桃。その後、花の香りや、菜の花のハチミツの香り。そして、最後に、湿った石を連想させる。


ハチミツの香り、それは、このワインが、木樽で発酵、熟成されたという、小さな証拠である。つまり、大樽の中で、珪岩の成分が熟しているということ。


ところで、もう既に記したように、キューン氏は、ワインを大きなアンフォラで仕立てるヴィンツァーの一人。それは、太古の作り方。今後、味の評価が俟たれる。


作;Captain Cork (2017,3,5)   訳;Yoko Yoshimoto

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